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首謀者の名前から、ジェイル・スカリエッティ事件と称されることになった 一連の事件は、聖王のゆりかごが崩壊したことで一応の幕を閉じた。しかし、 この事件の始まりは一体いつで、どの時点で終結と言えるのかは、当事者より も後世の歴史家たちの間で度々話題となっている。 六課設立時からゆりかご崩壊までの僅かな期間、それを持って終結とするに はいくつかの反論や相対する意見がある。というのも、この事件には不明確な 点が余りにも多かった。彼らは後世を生きる者として当事者たちよりもある意 味では多くの情報を持っているのだが、それだけに感じる違和感があるのだ。 そもそも、スカリエッティを倒し、聖王のゆりかごを崩壊させたのは誰なのか――? ミッドチルダ史の謎として残るこの事件だが、別に当事者たちに責任がある わけでもない。彼らの多くはこの時期、ミッドチルダ首都クラナガンを初めと した各地の被害状況を調べ、復興の準備を進めている最中だった。事件の概要 や詳細、結末などを気に掛ける者もいないことはなかったが、そんなものは上 層部がまとめることだ。いずれ、公の場で発表があるだろう。 そうして、各々が自己の責務を全うする中、古代遺物管理部機動六課ライト ニング分隊所属、フェイト・T・ハラオウンは短い期間ではあるが休暇を申請し、 それが受理されているところであった。名目は戦傷と疲労による療養であった が、彼女の傷は重いものではなく、休暇を申請した頃にはほとんど癒えていた。 ただ、戦闘要員としての仕事がないとはいえ、各所が人手不足で悲鳴を上げて いる時期であったため、適当な理由付けが必要だったのだ。 クラナガンにおける交通規制は徐々に解除され初め、一般市民の移動が目立 った。彼らの多くは職場や家を失い、街から去っていくのだ。街の復興は、管 理局が全力を注いで、最低でも半年はかかるといわれている。意外と短く感じ るが、これはゆりかごによる攻撃と戦闘の大半がクラナガンだけに行われ、被 害も首都内だけで済んだことにある。 フェイトは自動運転の地上車を呼ぶと、ベルカ自治領に向かった。人生でも っとも高い買い物の一つであった愛車は、六課の隊舎壊滅の折に失われている。 義兄に「これを機にもっと趣味のいい車に買い換えてみては」といわれたが、 大きなお世話だと思う。 聖王教会が運営する聖王病院は、自然が豊かな山中にある。ミッドチルダ北 部のベルカ自治領にあって、首都からもさほど離れていないこの病院には、多 くの傷病兵が入院、または通院しながら治療を受けている。フェイトもその一 人だが、今日は治療を受けに来たわけではない。 病院に到着し、同乗者と別れ院内へと入るフェイト。 ふと、回りに生い茂る木々を見上げると、葉に赤みがかったものが見え隠れ している。 もう、夏も終わりに近づいているのだ。 最終話「ゼロからはじまる物語」 「身体の具合はどう?」 フェイトは、親友の病室を訪れていた。 高町なのは、ゆりかご攻防戦の際にゆりかご内へと突入し、重傷を負った彼 女は、聖王病院で治療を受けていた。 「……悪くはない、かな」 一時は死の危険すら合ったと言われるなのはであるが、シャマルによる適切 な処置も合ってか、一命は取り留めた。そのまま彼女が主治医として治療を担 当しているが、完治までには長い時間が掛かるという。少なくとも、後遺症は 確実に残り、最終的に最大魔力値が7~8パーセントは下がるとの診断結果が出 ている。 「数年か、最低でも二ヶ月はゆっくり休むべきだってシャマルが言ってた。本 当は引退を勧めたいけど、なのははそれを聞かないだろうからって」 苦笑するフェイトに、なのはは無言だった。ベッドから起きあがりもせず、 黙って天井を見つめている。無気力とは、こういうことを言うのだろうか? 虚ろな目をする親友に、フェイトはため息を付いた。 無敵にして不屈のエース・オブ・エース、高町なのは。管理局でも五指には いるとされる実力者である彼女が重傷を負ったのは、今回が初めてというわけ ではない。8年前にも一度、似たようなことがあった。あの時は、自分ともう 一人、ずっとなのはに付き添っていた。 「そうだ、はやてとエリオは今のところ大丈夫だって。あの二人、怪我が治っ てないのに無理矢理出撃して、結局病院に逆戻り、シャマルが凄い怒ってたよ」 特にはやては、大事にこそ至らなかったが、しばらくは絶対安静と言われて いる。対照的にエリオは、若さ故か驚異の快復力を見せつけており、原隊復帰 も難しくないという。 「現場の方は、私やシグナムが何とかするから。それにティアナとスバルも頑 張ってくれてるし、後――」 「フェイトちゃん」 話題が途切れないようにと口を開き続けていたフェイトに、なのはが小さく、 だがハッキリと話しかけてきた。 「……なに? なのは」 やや緊張した面持ちで、フェイトが言葉を返す。自分でも情けないことに、 今のフェイトは親友に対してどんなことを言えばいいのか、それがわからなか った。ここに来る間も考えていたのだが、結局は現況を伝えるという無難な話 しかできなかった。 しかし、なのははフェイトが思っていたことと、まるで違う話をし始めた。 「私は、フェイトちゃんを親友だと思ってる」 何を今更、そんなことは確認するまでもないことだ。出会ってから十年、時 に意見の食い違いや、喧嘩をすることがあっても、私となのはは親友であり、 これからもずっとそうだ。 フェイトが困惑した表情を向けると、なのははゆっくりとベッドから起きが ある。止めようと思って、フェイトはそれを止められなかった。 「高町なのはっていう女の子を、私以上に知っているのはフェイトちゃんとも う一人だけ。だから、私はフェイトちゃんには話そうと思う」 なのはの表情、そして口調にも暗い影があった。明るさや快活さ、天真爛漫 とはいかないまでも、常に周囲へ笑顔を振りまいていた頃の彼女は、そこには いない。 「……なのは、ヴィヴィオとのことは、私も判っているつもり。だけど、あな たがあの子に負けたことは」 フェイトやはやてでさえ互角に戦うのがやっとという実力に、エースとして の自負、なのはにだってそれぐらいはあっただろう。それがヴィヴィオに、娘 のように愛したであろう少女に打ち砕かれたのだ。魔導師として、戦士として のショックは計り知れないだろう。 そんな、なのはの気持ちを酌んでやったつもりのフェイトだったが、なのは は親友の言葉に首を横に振った。 「違う、そうじゃないの……そうじゃないんだ」 ベッドの中から、自分の右手を出して見つめるなのは。美しいと言うほど白 くもないが、汚れのない綺麗な掌だ。 少なくとも、一滴の血も付いてなどはいない。 「私はあの時、ゆりかごの玉座に座るヴィヴィオと再会して、戦った」 そして、完膚無きまでに叩きのめされ、敗北した。 圧倒的な聖王の力に勝てなかったのか、それともやはり娘のように愛した少 女に攻撃できなかったのか、なのはは今までその辺りの事情、所謂敗因につい ては話そうとしなかった。 「本当のことを言うとね、私が全力全開、全てを出し切っていれば、多分ヴィ ヴィオに勝つことは出来たと思う」 言葉に、フェイトはそれほど驚きはしなかった。なのはを破った直後のヴィ ヴィオ、フェイトは実際に聖王となった彼女を見たわけではないが、ほぼ無傷 といっていい状態だったという話は聞いた。前述の通り、なのはは自分やはや てをも上回る無敵のエースだ。それが、敵に傷の一つも負わすことなく、一方 的に負けるなど、あり得るのだろうか? 状況から、なのははヴィヴィオに対して、攻撃をしたくても出来なかったと 思うのが自然だろう。 「なのは、あなたがヴィヴィオに攻撃を出来なかった……攻撃をしたくなかっ たという気持ちは当然のことだよ。一時的に敵になってしまったとはいえ、あ んなにあなたを慕ってくれていた子だもの。そんなヴィヴィオに為す術がなか ったからと言って、あなたを責める人はいないし、責める人は私が」 「フェイトちゃんっ!」 許さない、そういおうとしてフェイトは言えなかった。なのはの叫び声が、 フェイトの声をかき消した。 「違う、違うんだよ……そうじゃ、ないの」 なのはは震えていた、怯えが隠せず、隠そうとせず、何かに恐怖するかのよ うに震え上がっていた。 「フェイトちゃん、私は、私は」 なのはが、フェイトに向かって顔を向けた。 「私は、自分が怖い」 思わず、フェイトは面食らったように言葉を詰まらせた。ヴィヴィオが怖い、 と言うならまだ判る。自分を徹底的に痛めつけた少女に、今後どう付き合って いけばいいのか、それがわからないというのなら、可哀想だが仕方のないこと だろう。だが、自分が怖いというのは…… 「あの時、私は確かにヴィヴィオと戦った。はじめはあの子を止めるため、助 けるために、私は全力で戦ったの」 フェイトが驚きの表情を見せるなか、なのはは言葉を続ける。そう、なのは はヴィヴィオと戦った。聖王となって最強の存在と化した彼女と、激闘を繰り 広げたのだ。 「でも、私は戦いを続ける中で、あることを考える自分に気付いてしまった」 なのはが、顔を伏せた。 「あること……?」 言葉を、決定的な告白をするのに、なのはは僅かな躊躇いを見せていた。け れど、親友であるフェイトに、フェイトだからこそ、彼女は話さなければいけ ないと思った。 「どうすれば目の前にいる敵を倒し、殺すことが出来るんだろう――?」 なのはは、ヴィヴィオと戦いを続ける中で、いつしかそのように考えていた という。 「笑っちゃうよね、娘のように思っていたあの子を、あの子から母親のように 慕われていた私は、殺そうとしたんだよ? ヴィヴィオと戦って、私はいつの 間にか、どうすれば聖王という敵を倒せるのか、それだけを考えてた」 それに気がついたとき、なのはは戦うことが出来なくなった。 「ヴィヴィオを倒そうと、殺そうとしている自分に気付いたとき、私は何も出 来なくなった。私は怖かった、ヴィヴィオを倒そうとする自分じゃなくて、ヴ ィヴィオを倒すことに一瞬でも疑問を感じなかった自分が、怖かった!」 ――何よりも悲しかったのは、だんだんと何も感じなくなってくる……自分の心 いつか、ゼロがなのはに言った言葉である。正確には彼の友だった男の言葉 であるが、今のなのはにはその言葉の意味が、悲しさの裏に隠れた怖さが、し っかりと判るのだ。 お前もいつかこうなる、ゼロはそのように名言こそしなかったが、なのはが ヴィヴィオと戦い、彼女を倒すこと、殺すことに何も感じなかったのは事実だ。 寸前でそれに気付き、思いとどまることが出来たのは、心の奥底でこの時の言 葉が引っかかっていたからだろう。 「私は自分が怖かった。魔導師として、戦士として、九歳の頃からずっと戦い 続けてきて……私はこのままだと、自分の大事なもの、自分が大切にしたいと 思っているものまで、壊しちゃう」 現に、ヴィヴィオと戦っていたときのなのはは、彼女を愛した母親ではなく、 聖王を倒すことだけを考えていた戦士であった。 「もう、無理だよ、私はきっと、戦士としてしか生きられないんだよ……」 なのはは震え、そして泣いていた。とっくに、彼女の心は壊れていたのだ。 フェイトやはやてのように明確に守るものもなく、常に疑問を抱えながら戦っ てきた高町なのは、エース・オブ・エースと呼ばれ、比類ない実力者となった にも関わらず、その心は、以前に比べて弱くなっていた。 「なのは……」 フェイトは悲痛な表情を浮かべていた。何といえばいいのか、彼女は自分に、 戦士としての高町なのはに強い恐れを抱いている。戦士としての誇りや矜恃で ごまかしてきた心の荒廃が、ここに来て露わになった。自分自身では、手の付 けられようがなくなった状態で。 「ヴィヴィオは、なのはに会いたがってる」 敢えて、フェイトはその名を口にした。なのはと共にフェイトが救出した彼 女は、聖王病院とは違う施設で、現在隔離状態にある。元々目立った外傷があ ったわけでもなく、入院の必要はなかったのだ。 「私に、そんな資格はないよ……母親どころか、あの子に会う資格だって、私 には初めからなかったんだよ」 完全に気落ちしている親友を、この際フェイトは慰めなかった。何を言って も効果はなさそうだし、何か言えば解決する問題でもないのだ。 「なのはに資格があるかどうかじゃなくて、ヴィヴィオが会いたいかどうか、 子供が親に会いたいと思うのは、当然のことだよ」 「だけど……私はあの子の本当の親じゃ」 「ヴィヴィオは今、とても微妙な立場にある」 曖昧な表現に、なのはが顔を顰める。もちろん、フェイトは順序立てて説明 するつもりだった。 「管理局と聖王教会は、ヴィヴィオの扱いに、処分に困ってる」 つまり、こういうことである。 聖王のゆりかごを起動する為に作られた器である、鍵の聖王ヴィヴィオ、盗 まれたとはいえ聖王の遺伝子によって生み出された彼女は、紛れもない聖王の 一族として数えられるべき存在だった。聖王とは聖王教会にとって、本来信仰 の対象であり、絶対の忠誠を誓うべき忠義の相手だ。敬い、誇り、崇め奉る。 幼いながらも、ヴィヴィオはそうされるだけの理由と資格があるのだ。 だがそれに困惑したのは現在聖王教会を取り仕切る宗教権力者たちである。 教皇や枢機卿、大司教といった彼らは地位と権力を盾に教会内を牛耳ってきた のだが、聖王が復活したとなれば話は別だ。信者たちから彼らに向けられる恩 恵と崇拝の念も、今後は聖王ヴィヴィオに向けられることとなるだろう。そう なっては困るのだ。 ならば幼い聖王を傀儡とし、操っていけばいいのではないか? あざとさは 残るが、ヴィヴィオが幼い、幼すぎるのは事実であるし、養育の必要は十分に ある。けれど教義の上で言えば聖王は絶対的な存在であり、養育すること自体 が恐れ多い発想で、しかも信者から見れば一部高位聖職者が聖王という存在を 独占していると感じるだろう。下手をすれば、信者レベルにおける対立へと発 展しかねない。 では、いっそのこと処分してはどうか? 教会の立場からは聖王ヴィヴィオ に手出しすることは出来ないが、管理局であればまた話は違ってくる。スカリ エッティによって望まぬ生を受けたとはいえ、ミッドチルダ首都クラナガンを 壊滅させた聖王のゆりかごであり、それを起動させ、玉座へと君臨していたの はヴィヴィオに他ならない。大半はスカリエッティの罪であるが、ヴィヴィオ だって大罪ではあるはずだ。 こんな主張に対し、管理局は対応を鈍らせた。一側面から見れば、確かにヴ ィヴィオは罪を犯している。しかし、自らの望んで作られたわけでもなく、自 らの意思で考え、行動することすら許されなかった五歳の少女を、果たして罪 に問えるのか? それは、ヴィヴィオの存在その物を否定するのではないか? かつてのフェイトや、はやてがそうだったように、管理局はそうした複雑な 事情、特に生命倫理に関する問題には慎重だった。多次元世界を管理する彼ら であるから、生きるために様々な行いをする種族を数多く知っている。それが 自分たちの倫理観とずれているからと言って、強制する権利などはありはしな いのだ。少なくとも、それが管理局の掲げる表面上の考えだ。 「管理局は作られて使用されただけの存在であるヴィヴィオを、処分も処断も 出来ないでいる。このままだと、扱いに困った管理局と教会が、秘密裏に謀殺 ……暗殺することも考えられる」 「そんな、そんなの酷い!」 声を上げるなのはだが、可能性とはいえこれは決して低くない話だ。ヴィヴ ィオなどという存在は初めから居らず、聖王は復活などしていない。管理局も 教会も、事件の根幹に関わる部分は隠したがっている。そんな権力者たちの手 によってヴィヴィオが消されても、現状全く不思議がないのだ。 「だから、なのははヴィヴィオを引き取って、あの子を守ってあげて! 私と はやて、それに騎士カリムも協力するから!」 出なければ、ヴィヴィオは遠からずその姿をこの世から消すだろう。 「でも、だけど……私は」 迷いは、やはりあった。ヴィヴィオのことを好きだという気持ち、愛すると いう気持ちは確かにある。けれど、なのははそんな自分の気持ちを信じること が出来ないでいるのだ。ヴィヴィオが自分を倒したことなど、全く気にはして いない。彼女が倒さなければ、自分がそうしていたのだから。 「ごめん、少しだけ考えさせて」 なのははポツリと呟くと、布団を被ってベッドに潜り込んだ。 「僕は彼女の弱さを知っていた……彼女の悩みも、辛さも、みんなみんな、僕 は知っていた」 聖王病院の屋上で、二人の男が話している。一人は、時空管理局無限書庫 史書長、ユーノ・スクライア。もう一人は、異世界の戦士にして聖王ヴィヴィオと 聖王のゆりかごを倒した、ゼロである。 「フェイトと僕は、恐らくなのはの心の奥深くに触れることが出来る、彼女が 触れることを許した、数少ない存在だ。僕はある意味でフェイト以上になのは のことを知っていたけど、それだけだった」 何をするわけでもなければ、何をしてやったわけでもない。 「僕はなのはの弱さを知っていながら、それに触れようとしなかった。全てを 知る身でありながら僕は責任を放棄した……それはきっと、僕がなのはの強い 部分に、戦士としての強さに強く惹かれ、憧れを抱いていたからなんだ」 身勝手な、身勝手すぎる話だ。ユーノはなのはの弱さを知りながら、それを 意図的に無視してきた。何故ならユーノは、彼女の強さが好きだったから。十 年前、彼を助け、共に戦ってきた彼女の、輝くような笑顔と、凛々しさ溢れる 魔導師としての姿に、惚れ込んでいたのだから。 「こうなんるじゃないかと、思ってはいたんだ。なのはは自分の内面、悩みと 言ったものを弱さとして捉えている。そして、彼女は他者に弱さをさらけ出す のを良しとしない人だ。恥じているからではなく、心配を掛けたくないという 気持ちから」 それすらも理解していたのに、ユーノはなのはに手を差し伸べなかった。な のはは何も言わない、敢えて触れようとしないユーノに感謝はしていたが、そ れでも心の奥底では、弱い自分をさらけ出したくて、ユーノに受け止めて貰い たいと、思っていたのではないか? 「どちらにしろ、僕は最低な男だよ」 ユーノもまたなのはの見舞いに来ていたのだが、病室の前で佇み、中に入る とが出来なかった。 「判っているなら、変えていけばいい。今までは取り戻せなくても、これから があるだろう」 優男の独白を聴きながら、ゼロは呟いた。二人が会うのは初めてではないが、 こうやって会話をしたのは初めてだ。 何故ユーノがゼロにこのような話をしているのか、その理由は当人たちですら 判らなかったが、誰かに聞いて貰いたかったのだろう。 「君は意外と、愉快な人だね。なるほど、これからか」 遠い目をしながら、病院周辺の景色に目をやるユーノ。 そうして会話もなく二人が佇んでいると、屋上の扉が開いて、フェイトが現 れた。 「ゼロ! と、それにユーノも」 次いでのように言われたが、そもそもフェイトはユーノが来ていたことすら 知らなかった。 「やぁ、フェイト。なのはとの話は終わったのかい?」 職業柄、ユーノの耳にも様々な情報が入ってくる。フェイトが今日ここに来 た理由も、ただの見舞いというわけではないことぐらい判るのだ。 「……ユーノ、折角来たんだから、なのはと会ってあげて」 フェイトにとっても、ユーノは幼馴染みだ。なのはほどではないが長い付き 合いであり、彼となのはの関係についても、人より熟知しているつもりだ。言 葉に顔を背けるユーノに、フェイトは言葉を繋いでいく。 「今のなのはが必要としているのは、私じゃなくてユーノだよ。口には出さな いけど、あなたに話を聞いて貰いたいって、なのはは思ってる」 「けど、僕は……」 「二人とも、もう少し自分に素直になるべきじゃない? お互いの気持ちを理 解し合ってるのに、本人たちが気付かないフリして隠し続けてるなんて」 ユーノが驚いたようにフェイトを見た。 「参ったな、僕たちの心は見透かされていたのか」 「私だけだよ、私も二人の幼馴染みなんだから」 そうか、とユーノは苦笑すると、片手を上げて屋上を後にした。 後日の話になるが、結局なのははフェイトの言葉を受けてヴィヴィオを引き 取ることになる。見舞いから二週間後、主治医であるシャマルの猛反対を押し 切って退院したなのはは、幼馴染みであるユーノ・スクライアが住む官舎で二 週間生活し、その間はユーノ以外、誰にも会おうとしなかった。 やがて、はやてやカリム、クロノなどの手引きによって救い出され、三度の 再会を果たしたヴィヴィオを連れ、なのはは第97管理外世界地球、彼女の故郷 であり、実家のある街へと帰っていったという。 仮にも聖王を管理外世界に送る件に関しては、色々な問題があったのだが、 「聖王陛下が生きたままミッドチルダに残れば、これを奪取しようとする不逞 の輩が必ず現れます。ならば、そういった連中が手の出せない場所に行ってい ただくのが、一番良いと思われますが」 騎士カリムの言は、高位聖職者たちに一応の納得をさせることに成功した。 元々聖王を、五歳の幼女を害することに抵抗を憶えないわけでもなかったし、 要するに彼らの不利益にさえならなければ、それで良いのだ。 ヴィヴィオを連れ故郷の街へと帰ったなのはは、実家の手伝いをしながらま ず平凡と呼べるだけの、平和な日々を過ごしている。彼女が今後魔導師を続け ていくのかどうか、それはフェイトにも判らないことだが、下した決断を、暖 かく受け入れてやろうではないか。 フェイト・T・ハラオウンは、高町なのはの、親友なのだから。 前へ 目次へ 次へ
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第7回公式大会 夜間の部 第3位 使用者 KMさん 使用色 全色 コンセプト - メインデッキ (60) 赤 (9) 2 《空の殲滅者“セッテ”》 2 《破壊する突撃者“ノーヴェ”》 2 《守護する滑空者“ウェンディ”》 3 《アクセルシューター》 黄 (13) 2 《姿偽る諜報者“ドゥーエ”》 2 《高速の閃刃“トーレ”》 4 《沈黙の狙撃手“ディエチ”》 3 《フォトンランサー》 2 《ハーケンセイバー》 黒 (12) 4 《無限の欲望“ジェイル・スカリエッティ”》 2 《刃舞う爆撃手“チンク”》 2 《潜行する密偵“セイン”》 4 《閃光の術士“オットー”》 緑 (2) 2 《瞬殺の双剣士“ディード”》 青 (20) 4 《スクライア一族“ユーノ・スクライア”》 3 《無限書庫司書“ユーノ・スクライア”》 4 《不可蝕の秘書“ウーノ”》 4 《幻惑の使い手“クアットロ”》 3 《プロテクション》 2 《フィジカルヒール》 無色 (4) 2 《トリプルブレイカー》 2 《ジュエルシード》 サイドボード (15) 黄 (7) 4 《夢を追う少女“ティアナ・ランスター”》 2 《流星の射手“ティアナ・ランスター”》 1 《フォトンランサー》 緑 (7) 4 《風の癒し手“シャマル”》 3 《湖の騎士“シャマル”》 無色 (1) 1 《プラズマ・スマッシャー》
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ トリステイン城下町で男は目を冷ました。 男は何故ここで気を失っていたのかを思い出そうとする。 たしか路地裏で衛士どもに追い詰められていたはずだ。 その後、目くらましにするつもりで掴んだ植木鉢から青い光が溢れて……その後はよく覚えていない。 だいたい、ここは路地裏ですらない。地面が剥き出しとなった広場ではないか。 辺りを見回せばこの広場は意図的に作られたものではないことがわかる。 瓦礫の中、この場所だけが不自然に開けているのだ。 城下町にはこんな廃墟のような場所はなかったはず。 男は軽い頭痛に悩まされながらも考え続けるが、路地裏にいた自分が何故こんな所にいるのかどうしても思い出せなかった。 この場所には城下町を破壊する原因となった巨木が生えていたのだが、気を失っていた男はそんなことはもちろん知らない。 「おお、こんな所にいたのか。随分探したぞ」 悩み続ける男を呼ぶ声がした。 聞き覚えのある声の主を見て、男はほっとした。 彼を手引きしたトリステインの魔法衛士隊の人間ではないか。 その衛士は彼らの思想に共感し協力者となっているのだ。 「すまない。どうも記憶がおかしい。頭でも殴られたのかもしれん」 トリステインからの脱出も衛士が手引きをすることになっている。 男はふらつく足で衛士の元まで歩いた。 「そうか。だが、急いで安全な場所まで行かねばならんな。すでにこのあたりにも私以外の衛士が多く来ている。私とてその全てをごまかすことはできん」 衛士は少々あきれた目で男を見ていた。 それも仕方はないだろう。こんなところで考えにふけっていたのだ。逃亡中の間諜のすることではない。 「それで、俺はどこに行けばいいんだ?」 男はようやく元にたどり着いた。その頃になっても、まだ頭痛は取れてはいなかったが足下はしっかりしてきていた。 「なに、すぐに着くさ」 瞬間、男は腹に耐えられない熱さを感じた。 いや熱いのではない。痛みが酷くて熱さと体が勘違いしているのだ。 その証拠に自分の腹には魔法衛士隊の使う鋭い杖が突き刺さっているではないか。 「君の逃げ場所はもう死者の国しかないのだからね」 衛士は呪文を唱えながら、男から引き抜いた杖を振る。 それにより作られた雷撃が降り注ぎ、男を地面に叩きつけた。 なおも雷撃は続く。男は雷撃を受ける度に痙攣し、自らの体を地面にぶつけた。 それが数回。男は地面に倒れ伏したまま、手足を炭化させている。 男が自分の力で動くことは二度と無かった。 形態を通常のデバイスモードに戻したレイジングハートがいくつかの開口部から水蒸気を吹き出す。 それに合わせてルイズも肺の中の空気を全て吐き出した。 ルイズはかなり疲れていた。 いきなり生えてきたジュエルシードの大木に振り回されたというのもあるが、ディバインバスターの負担がかなりこたえていた。 練習の時から負担のかかる魔法だと解っていたが、実際に使うと思ったよりも疲れが出てきた。 前にユーノが言ったとおりもう少しプログラムを変えてみた方がいいかもしれない。 ──そろそろ帰ろうか。 そんなことを考えていると 「ねえ、ルイズ。そんなとこで何してるのよ」 後ろから声が聞こえた。 聞き覚えのある声だ。しかも、あまりここで聞きたくない声だ。 顔面を紅潮させたルイズはおそるおそる振り返る。 ばっさばっさ きゅるきゅる すぐさま目にも止まらぬ速さで顔を元に戻す。 「ユーノ、私、今幻覚を見たの。とっても疲れているのかも知れないわ」 「あ……それはね」 「なに言ってんのよ。幻覚じゃないわよ。ミス・ヴァリエール」 ルイズは歌劇俳優のように大げさな身振りで手を額に当て、絶望にうちひしがれる貴婦人のように空を仰ぎ見る。 「あぁ、どうしましょう。幻聴まで聞こえてきたわ。私、もうだめかも知れない」 そう、幻聴に違いない。そうに決まっている。 「いいから、こっち見なさいよ。幻聴じゃないわよ」 だが無慈悲にも現実は変わらない。後ろからはっきりと聞こえてくる声は幻聴でも幻覚でも無いような気がしてくる。 ルイズは意を決しておそるおそる振り向いた。 ばっさばっさ きゅるきゅる 風竜、それに乗った赤い髪の女と青い髪の女。 もはやどうやっても否定できない。 「あ、あははは。あははははははははは」 シルフィード、それに乗ったキュルケとタバサがいた。 キュルケだけでなくタバサも本から目を離してルイズを見ている。 ルイズは焦った。それはもう焦った。 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしょう。 「さぁ、ゼロのルイズ。何から何まで全部喋ってもらうわよ」 キュルケは胸を突き出し、シルフィードの背中からルイズを見下ろしていた。 キュルケ達がルイズを見つけたのはシルフィードに乗って壊れていく町から飛び立った後だった。 しばらく町の外縁を周回していたのだが、そのうち遠くに空を飛んでいる白いメイジと茶色いマントのメイジを見つけた。 フライはそんなに長時間使える魔法ではない。使っている間どんどん精神力が消費される。 あんなところで浮かんでいてはそのうち精神力切れで地面まで真っ逆さまだ。 おそらく地上の根から逃げているうちにあんな所に飛び上がってしまったのだろう。 誰かは知らないが手助けくらいはしてやってもいいかもしれない。 しかし近づけば地上から蔓や蔦が伸びてきて捕まってしまう。 どうしようか手を出しあぐねているいるうちに、キュルケは驚くものを見た。 そのメイジは空を飛んだまま魔法を使ったのだ。 系統魔法ではフライを使ったまま他の魔法を使うことはできないのに。 さらにそのメイジの使ったもう一つの魔法もすごいもので、一撃で町中に生えていた巨木を光に変えてしまった。 スクエアのメイジだって、あんな魔法を使う者は少ないだろう。 こうなるとキュルケはその謎のメイジに俄然興味がわいてくる。 タバサに頼んで謎のメイジ近寄ってみるとまた驚いた。 白いメイジはルイズで、茶色いマントのメイジはルイズの男ではないかと疑っている少年だったのだ。 まさに一石二鳥。面白いことになりそうではないか。 そのルイズは今、目の前で酷く慌てている。 ルイズの気持ちもわからないではないのでキュルケは待ってやることにした。 待っている間、キュルケはルイズをじっくり観察する。 まず、あの白いドレス。悪いものではない。それどころかとてもいいものだ。 裕福な貴族の生まれのキュルケの目から見ても感嘆を覚えるような一品だ。色も光沢もすばらしい。生地の質も一級品だ。 あれと同じものを揃えようと思ったらお金だけでは無理だろう。 続いて、杖。 全部金属で作っているようだ。どんな金属かは解らないが、かなりの技術で作られているように見える。 これも同じものを手に入れるとなれば相当腕のいい土系統のメイジを見つけなければならないだろう。 ──いいものを揃えたわね そこで、キュルケは閃いた。 ゼロのルイズがフライを使いながらも魔法を使っている理由、スクエアに匹敵するような魔法を使っているのはドレスと杖が強力なマジックアイテムだからに違いない! となると疑問はルイズが何故そんなものをルイズが持って使っているかと言うことになる。 ──何か面白そうな話が聞けそう 学校の授業や、ボーイフレンド達との逢瀬よりも面白いかも知れない。 キュルケは赤い唇の端を少しだけ上げた。 顔面の全ての汗腺から汗を吹き出しつつ、ルイズは脳をフル回転させていた。 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう なんとかごまかさないといけない。 「あ、あの・・・・・・」 「ちょっと今は静かにして」 ユーノが何か言い足そうにしていたが、今は待ってもらう。 今は集中しないといい考えが浮かびそうにない。他のことに気を回している余裕もない。 「うん、わかった」 こうなってはルイズは聞く耳を持たない。アイデアはあったがユーノは黙っておくことにした。 「Knock out by buster.(砲撃で昏倒させましょう)」 レイジングハートの提案は少し心惹かれるものがあったが止めておく。 いくらツェルプストーでも学友相手には過激すぎる。 第一、解決になりそうにない。ここはもっと穏便な別の方法が必要だ。 ルイズはさらに考える。 そうえば、キュルケはさっき自分を「ゼロのルイズ」と呼んでいた。 ルイズはそこに光明を見いだす。 キュルケは自分をゼロのルイズと呼んでいる。 ゼロとは魔法を使おうとすれば全部爆発。成功率ゼロという意味のゼロだ。 だけど、今は違う。 空を飛ぶ魔法は爆発無しで使える。 ジュエルシード封印の魔法だって爆発しない。 ディバイバスターだって爆発……爆発……少し置いておくことにする。うん。 そう、自分は以前とは違う。魔法が使えるゼロではないルイズだと思わせれば、ルイズとは別人と思ってくれるかも知れない。 冷静に考えればかなり無理がある論理展開なのだが、ルイズはとにかくそう考えた。 ルイズはゼロではない二つ名を考える。そして見つけた。 これなら完璧。絶対に大丈夫に違いない。 「わ、私はルイズじゃないわ」 「はぁ?じゃあ、誰だって言うのよ。その髪、その顔、その胸。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール以外の誰だって言うのよ」 ──聞いて驚きなさい。 ルイズは自信満々に自分の名前を宣言した。 「私は、ルイズじゃない。私は魔法少女リリカルイズよ!!!!!」 ばっさばっさ きゅるきゅる シルフィードの鳴き声と羽音がよく聞こえてきた。 そういえば、いい天気ね。町まで遠乗りしてよかったわ。 小鳥の鳴き声も綺麗ね。だってキュルケとタバサ、それにユーノだって聞き惚れてこんなに静かじゃない。 ルイズの思考は体を離れかけていた。 キュルケは必死に口を引き結んでいた。 少しでも力を弱めれば決壊してしまう。 だが、それも無駄な努力で限界はすぐに来た。 「ぷっ」 唇の間だから空気が漏れる。 後はもう止められない。 「あはははははははははははははは、あはははははははははははははは、あはははははははははははははは」 笑い声で正常な思考を取り戻したルイズは頭を抱えそうになった。 「な、何よそれ、魔法少女って何よ。魔法少女って」 ホントは魔導師と言おうとしたのだ。ユーノはメイジのことを魔導師という。これだけでも印象はかなり変わるはずだ。 それが、どこをどう間違ったのか魔法少女になってしまった。 「そ、それに、リリカルイズ……リリカルイズって……あははははははははははははははは」 リリカルイズじゃないもん。リリカルルイズだもん。 ここでも滑舌が徹底的に悪かった。 あー、もー、どうしよう。というか、どうしようもない。 「ねえねえ、タバサ。聞いた?魔法少女ですって、魔法少女。しかもリリカルイズ……あははははははははあはははは」 タバサは小さく肯いた。そして笑い転げるキュルケに言った。 「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」 ばっさばっさ きゅるきゅる ルイズは固まった キュルケも固まった ユーノもついでに固まった 三人の魂はどこかに飛んでいった。 最初に魂を取り戻したキュルケはこめかみを押さえながら、ゆっくりとタバサに言い聞かせた。 「ちょっと。タバサ。冗談よね。まあ、あなたにしては面白い冗談だと思うけど。別にあの子につきあってあげなくていいのよ。あの子はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよね?」 タバサは首を横に少し大きく振った。 「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」 キュルケは思いっきりたじろいだ。 その時のタバサの目は真剣だったからだ。 本気だった。本気と書いてマジだった。大マジだった。 その瞬間、ルイズも魂を取り戻した。 「じゃ、じゃあそういうことだから。リリカルイズは次の戦いに旅立つわ」 言うが早いがルイズは未だ茫然自失のユーノの手をひっつかみ、空の彼方にダッシュ。 「待ちなさい!タバサ、ルイズを……」 「ルイズじゃなくてリリカルイズ」 「ああ、もう。なら、そのリリカルイズを追うわよ!!」 「無理」 「なんで?」 「もう、追いつかない」 ルイズの姿はすでに砂粒よりも小さくなっていた。 「……どんな速さしているのよ」 砂粒もすぐに見えなくなる。 そうなってもキュルケはまだ地平線を見つめていた。 城門前に止められたヴァリエール家の紋章の着いた馬車の中では桃色がかったブロンドの夫人が高貴さを漂わせていた。 誰であろう、ラ・ヴァリエール公爵夫人である。 ラ・ヴァリエール公爵はすでに軍務を引退しており、特別なことがない限り城に出る必要はない。 しかし、それでも公爵家ともなれば国政と全く無関係ではいられない。 そこで公爵夫人は内政で多忙な夫に代わり、衛兵に顔を知られる程度の頻度で登城をしていた。 待つこと数分。馬車の外より夫人を呼ぶ声がした。 「奥方様」 「入りなさい」 夫人の呼びかけに応じ、馬車に入ってきた人物もまた桃色がかったブロンドの女性であったが、その雰囲気は夫人とはかなり違う。 髪を後ろでしばり、剣を帯く姿は武人のそのものであり、高貴さよりも勇猛さがにじみでている。 「町の様子はどうでしたか?」 「は。町を占領していた木々は出現と同様に突如消滅。住民の混乱もひとまず収まりつつあります」 「そうですか。原因はやはり?」 「はい。私が見つけた不審者のようです。あの者が何らかのマジックアイテムを使ったと言うことです」 桃色のブロンドの武人は城内で不審者を見つけ、一太刀を与えていた。 「その者は捕縛されたのですか?」 「いえ、グリフォン隊が追い詰めたものの激しく抵抗したためやむなくライトニングクラウドで……」 「そうですか」 夫人はため息をつく。 ライトニングクラウドを使ったということは、持ち物は全て焼き尽くされているはず。 不審者の背後を探ることはもはや不可能であろう。 「奥方様。マンティコア隊隊長がお礼を申し上げたいと来ていますが」 「礼はあなたが受け取っておきなさい。私は何もしていません」 「しかし……」 「すでに言いましたよ」 桃色のブロンドの武人はもう一度外に出る。 つい昔の癖が出てしまった。すでに引退した身なら、もう少し遠慮をした方がよかったかも知れない。 それでも、この事件は気になった。最低限のことでも調べずにはおられなかったのだ。 夫人は柔らかい椅子に深く体を預け、目を閉じた。 やがて、馬車が動き出す。 夫人はトリステインの未来と自分の娘達、そして馬車の外を歩く武人に思いを馳せた。 全力で空を飛ぶこと数十分。ルイズは学院の近くに着地した。 飛んだまま帰ってしまってはみんなにばれてしまうので、直接学院には飛んで戻れない。ここからは歩きだ。 「ふう……今日は疲れたわ。なんでだろ」 とは言ったものの理由はわかっている。 町中に出現したジュエルシードの大木と戦ったからだ。 でも、それよりその後でキュルケと遭遇した事の方で疲れているような気がするのは何でだろう。 続けてユーノが着地する。いつものように姿をフェレットに変えようとしたときだ。 「あっ!」 ユーノが少し大きな声を上げる。 重大なことに気づいたのだ。 「どうしよたのよ、ユーノ。大きな声で一体」 「ごめん。でも、ルイズ大変だよ」 「どうしたの?」 まだこれ以上何かあるのだろうか。ルイズはうんざりした気分になった。 「馬を町に忘れている」 「あっ!!!!」 ルイズが目と口を大きく開ける。 そういえば、あの騒ぎですっかり忘れていた。 「どうしよう……」 「取りに行かないといけないよ。預けっぱなしはいけないんでしょ?」 「うん……」 疲れがさらにどっと出てきた。意味のない往復は疲れるだけだ。 「それでね、ルイズ。一つ聞きたいことがあるんだ」 「なに?」 「どうして、町に行くときに飛んで行かなかったの?馬よりずっと早いのに」 「!!!!」 喉から飛び出しそうになった驚きの声を抑える。 そういう発想はルイズにはなかった。 系統魔法のフライは長距離移動には適さない。少し長く使っただけで精神力がきれてしまう。 そのため、スクエアメイジであっても少し遠いところ、例えば学院から町に行くときには馬を使う。 こういうこともあって、ルイズには町まで魔法で飛んでいくという発想はなかったのだ。 だが、言われてみればその通り。 今ルイズが使う飛行魔法は系統魔法よりずっと疲れずにすむし、遠くまで早く飛べる。馬を使う必要はなかったのだ。 でも「考えてなかったわ」とはユーノに言いたくない。 主人としての沽券に関わるではないか。 だからルイズはこう答えた。 「そ、それはね。ほら、飛んで行ったらそれを人に見られちゃうかも知れないじゃない。だから馬で行ったのよ」 「あ、そうか。そんなこと考えてなかったよ。すごいよルイズ」 ──よかった。ごまかせた。 ユーノの感嘆の声を聞きながらルイズは額ににじみ出た汗を袖で拭き取り、もう一度バリアジャケット姿になる。 早く馬を取りに戻らないと帰りには夜になってしまう。ルイズはユーノと空に飛び上がり、町へ向かって速度を上げた。 その頃。 ルイズの馬は「ルイズが忘れて帰ってしまった」と判断したキュルケが乗って帰っていた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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南イタリア ネアポリス空港 両替所にて、クロノはある程度まとまった金を両替した。 「すまない、市内までタクシー代はどれくらいかかるだろうか?」 「4000~5000ってとこかね」 「そうか、ありがとう」 金を財布に入れ、もう一人の同行人の元に戻ると、札束の半分辺りを手渡す。 「おおよそ、10、20万あるはずだ、ある程度雑貨品も買い込む必要があるし足りなくなれば言ってくれ」 「お金の管理はちょっと苦手かも…ユーノ君お願い出来るかな?」 「いいけど、持つときは複数の場所に分けてね、スられた場合の保険に」 肩にフェレット、ユーノを乗せた高町なのは。いつもの制服ではなく私服なので、多少は周りに溶け込めていた。 「こういう服はあまり着た事無いから…ちょっと慣れないな」 「似合ってるよクロノ君、普通の人みたい」 「いや、普通の人だが」 対してクロノはいつもの執務官服ではなく、黒の上下に藍色のジャケットを羽織っていた。 二人とも少々大きめのスーツケースを引いている。ぱっと見は単なる旅行者以外の何物でもない。 「普段は普通に見られていなかったのか…」 「さて、タクシーで拠点に向かおうか、なのは」 がっつりと落ち込むクロノはあえて無視する。 「そ…そうだね…」 「ねえ、タクシー探してる?」 二人(と一匹)に声をかける者がいた。 「アルバイトでこれから帰る所だから安くしておきますよ…8000でどう?」 服は胸元がハートの様な形に開いた、暗い配色の…制服…だろうか? 輝く様な金髪の前髪を3つ丸めて束ねている、年の瀬はクロノより少し年上なのだろうか。 「厚意はありがたいが、ちゃんとタクシー乗り場で乗る事にするよ…流石にそこまで暴利ではね」 「く…クロノ君…」 なのはは物言いを多少咎めるのと同時にタクシー乗り場に目をやった。 乗り場にはかなりの長蛇の列、タクシーが来る時間の割合を考えると1、2時間で済むだろうか…? 「…あっちの客には声をかけないのか?」 「君達が断るなら…これから…、じゃあ、2000円ならどうかな?」 「…いきなり安くなったな」 「チップは無しなんだから、荷物は自分で助手席に積んでくれ、そっちのレディは別だけどね…」 「…わかった、それでいい…なのはは後部に荷物と一緒だ、僕は荷物を前に載せて後ろに」 「うん」 かなり大きめの荷物を前に乗せるクロノ。 「ちゃんと指定の場所まで送ってくれよ?僕らはただの観光客じゃないんだからな…」 「正直に送り届けますよ」 そして、なのはとクロノが後ろに乗り込もうとした時 「ただし、空のバッグだけを、ですがね」 車が急発進した。 「…ふぇぇ!?ま、まだ乗ってないよ!」 「早速か…やれやれ…誰も手をつけたがらないのも納得だ…」 「止めるよ!」 少年はバックミラーで二人の表情を確認した。呆気にとられて慌てる少女と頭に手をあてやれやれと首を振る少年。 だが、追ってくる様子すらない、奇妙に思ったが振り切ってしまえば此方の物だ。 「チャオ」 だが空港を抜けようとしたその時、車がガクン!!と前につんのめり、止まった。 タコメーターはエンジンの不調を訴えてはいない、ガソリンも十分。だがタイヤは地面を空回りするばかりで前に進まない。 「ユーノ君……凄い…」 「一瞬でこれだけのバインドを編んだのか…」 一般人には見えないが、二人には見えていた。周囲にあるガードレールや電柱に縦横無尽に絡まり車を二重三重に捕縛したチェーン・バインドが。 「僕だって一応修行してるんだよ、ま、奴への引導は二人にお願いするけど」 クロノは焦る事無くゆっくりと車に近づく。運転している少年はまだ車を弄っていた。 「言っただろう?ただの観光客じゃないって…」 声をかけ、助手席の扉に手をかけると、流石に感づいた様で少年は運転席から飛び出した。 「荷物だけ置いていけばいい、追う必要もない…」 当然、クロノはこの少年が計画が失敗した事でパニックと罪悪と敗北の表情をするだろうと思った。 しかし…彼はそのどの表情もしなかった…少年は微笑んでいるのだ…… ただ平然ともの静かに微笑んでクロノを見ていた……… その表情には『光り輝くさわやかさ』さえある様にクロノには感じられた………。 少年はそのまま、さっと踵を返し何処へと消えた。 「クロノ君、大丈夫?」 「ああ…だがちょっと奇妙な奴だった…しかし、」 「二人とも…後ろの二人がちょっと面白い事を話してる…」 クロノの話を遮ってユーノが割り込んできた。二人はそのまま聞き耳を立てるが旨く聞こえない。 「念話で聞こえる様にするよ…」 「案外万能なんだな…」 「ユーノ君の一族遺跡発掘のプロだからね、言語、念話関連は凄く得意みたいだよ」 話の内容を漏らさぬ様に、急いだユーノのお陰ですぐに声が聞こえてきた。 「…ョルノの奴エンストして失敗したみたいだぞ」 「あいつ、半分日本人のくせして日本の旅行者をだまそうとするからバチが当たったんだ」 「もっとも、あの髪の色じゃあジョルノ・ジョバーナを日本人とわかる奴はいないがな…」 「いや…染めたんじゃないらしいぜ、黒い髪だったのがここ最近、急に金色になったらしいんだ、妙な体質だな…」 「本人はエジプトで死んだ父親の遺伝と言っている…」 「ジョバーナ…?」 クロノは胸元から写真を取りだした、黒髪の少年で、此方の組織と取引している条件…体組織の採取するべき少年だ。 「ジョルノ・ジョバーナ…汐華初流乃………初ルノ…シォハナ…」 「それ…さっきの人なのかな?」 なのはに言われて、先程の男の顔と当てはめてみる、確かに似てはいるが、まだクロノには今ひとつ確信が持てない。 「わからん…組織とコンタクトをとってより情報が手に入れば良いんだが…」 「クロノ、ところで君の荷物は…?」 言われて助手席に目をやるが、先程確かに自分で助手席に積んだ筈のスーツケースだが、それが今は影も形も無い。 「無い…だがさっきの奴は何も持っては……?」 よく見ると、助手席のところに何かへばりついている。粘性のボールの様な『それ』は更に内部に何かが入っている。 「これは…僕の荷物…なのか!?」 先程のクロノのスーツケースについていた名札『黒野』と言う文字が中に見える。 しかしそれは何度か鼓動を脈打ちながら別の物に変化…いや成長してゆく。 『それ』は呆気にとられているクロノの目の前で生物に変わってしまった。 『カエル』に 「魔法なのか…聞いた事もないぞこんな魔法はッ!!」 カエルはぴょいっとクロノの手にのっかる、ペトリとした粘性の手足の感触、重量、それは蛙に他ならない。 「生き物だ…変化魔法の類や幻術でもない…本物のカエルだ…」 「で、でも…最初はスーツケースみたいだったし、生き物だとしたらクロノ君の荷物は…?」 狼狽える二人を尻目に、カエルはクロノの手を飛び降り、そのまま排水溝から下水へと消えた…。 「…なのは、すまないが別行動だ僕はあいつを捜してみる、拠点の住所は覚えているだろう?そこに向かっていてくれ…なのはを頼むぞユーノ」 「はいはい」 「あまり無理しないでね…」 クロノはそのまま、市街へ向かって駆けだしていった。 「で、どうしようか、なのは」 「地図で見ると…少し歩くけどケーブルカーがあるみたい…そっちの方が良いかな」 二人は流石にこれからタクシーに乗る気は起きなかった。 ジョルノ・ジョバーナを探しに市街方面に向かったクロノだったが、その本人はまだ空港敷地内にいた。 滑走路の外れ、離陸する飛行機を眺めているジョルノ、待ち合わせしている様にもみえる。 相手はすぐに現れたようだ。先程のカエルが側の排水溝から、ジョルノの手の上に飛び乗った。 「よし…」 そのカエルは見る間に膨れあがり、先程のクロノのスーツケースへと戻った。 その場で中身を改めるジョルノ、だが容量の割に中身は少なく金になる物はせいぜい衣類か宿泊セット、目的のパスポートや財布は鞄の中ではなかったようだ。 「……やれやれ…無駄骨か…これだから無駄な事は嫌いなんだ、無駄無駄…」 前へ 目次へ 次へ
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現行&過去のパーティ紹介 このページでは、現在進行形でパーティ(PT)を編成中のメンバー及び、各PTの詳細をリスト化しています また、過去に結成され、現在では解散したパーティも一挙に公開しています これからPTを組もうと考えている人はここを参考にして下さい 現行&過去のパーティ紹介ヴィンセント一行 イリーナ一行 カードル村の屋敷調査隊(アルバート・ラシアン依頼) チョラス村王国調査隊 ユーノ一行 ※PT解散? 魔族の姉妹 ※PT解散? 親分と愉快な仲間達 ※PT解散 セイバー一行(ナールト村) ※PT解散 ロザリンド一行(ストライク・ワイバーンズ) ※PT解散 ラハール様と不愉快な仲間達 ※PT解散 天界一行 ヴィンセント一行 ヴィンセント・ヴァレンタイン ゲオルグ・プライム ゴブリン(×2) レゴラス ナイトガンダム ザベル・ザロック 【所持アイテム】 たいまつ×1 獣の牙×1 獣の肉×1 獣の毛皮×2 火打石×2 ロックガーターの胆石×3 獣人金貨×2 銅の髪飾り×1【装備者のMPを10上げる】 (氷の?)マテリア ランス村の野菜×15 干し肉×15 毒消し×2(?) 火の札、風の札×2 テント おくすり(?) 【キーアイテム】 永久氷晶 氷の紋章 ゴルギアス山の地図 羅針盤 Hな本(勇気がUP) ランスの魔法袋 【PT残金】 6750Jぐらい ~ヴィンセントPTのこれまでの道のり~ 詳しくはこちらへ イリーナ一行 イリーナ・フォウリー マルローネ デュアリス 【所有アイテム】 竹 筍 竜宥めの笛 カードル村の屋敷調査隊(アルバート・ラシアン依頼) アルバート・ラシアン ハセヲ カイム パスカル ニト=ニーゴ チョラス村王国調査隊 ルフィーア ジークフリート・シュタウフェン カイ・キスク ソル・バッドガイ ユーノ一行 ※PT解散? ユーノ ランサー 青崎青子&白レン オボロ 魔族の姉妹 ※PT解散? ヒロ プラーナ 親分と愉快な仲間達 ※PT解散 親分ゴブリン 墨目 魔導騎士ウルザード セイバー一行(ナールト村) ※PT解散 セイバー イリーナ・フォウリー ローグ アヴドゥル パティ 【所持アイテム】 ポーション×10 焔水晶 翠水晶 ロザリンド一行(ストライク・ワイバーンズ) ※PT解散 ロザリンド イリーナ・フォウリー ハセヲ ハワード ヒサメ リューム(サブメンバー) ミルリーフ(サブメンバー) アルティノ&ルナ(情報提供担当) 【所持アイテム】 ラハール様と不愉快な仲間達 ※PT解散 魔王ラハール アクターレ 天界一行 (キング・ブラッドレイ) シェゾ・ウィグィィ レザード・ヴァレス バトルノート テンル 【所持アイテム】 魔界のナイフ ローヤルゼリー ディスポイズン×3 エーテルセプター(破損) 究極の保存食 霊剣ベガルタ
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【名前】高町なのは(sts) 【出典】魔法少女リリカルなのはStrikerS 【声優】田村ゆかり 【種族】人間 【性別】女性 【年齢】19歳 【外見】 日本人の女性。茶髪のサイドポニー。身長は160㎝前後。高町なのは(A s)の面影を残す。 【性格】 優しく明るい性格で、誰かの悲しみや寂しさを放っておけない。温和な中にも厳しさがあり、怒るとかなり怖い。 【原作での設定】 高町なのは(A s)の約10年後の姿。鈍かった運動神経もある程度克服し、優秀な教導官となっている。時空管理局有数の魔導師として知られている。また10年の間に、リハビリに半年もかかる程の重傷を負っている。 明確な参加時期は、初登場作品の書き手に一任。 【面識のある参加者】 名前 呼び名 関係 高町なのは(A s) ― 約10年前の自分の姿 フェイト・T・ハラオウン(A s) フェイトちゃん(当時) 10年前の親友の姿 フェイト・T・ハラオウン(sts) フェイト隊長(公用)フェイトちゃん(私用) 10年来の親友 八神はやて(A s) はやてちゃん(当時) 10年前の親友の姿 八神はやて(sts) はやて隊長(公用)はやてちゃん(私用) 10年来の親友 ユーノ・スクライア ユーノくん 10年来の仲間 クロノ・ハラオウン クロノ提督(公用)クロノくん(私用) 10年来の仲間 シグナム シグナム副隊長(公用)シグナムさん(私用) 10年来の仲間 ヴィータ ヴィータ副隊長(公用)ヴィータちゃん(私用) 10年来の仲間 シャマル シャマルさん 10年来の仲間 ザフィーラ ザフィーラさん 10年来の仲間 スバル・ナカジマ スバル 大事な教え子で部下 ティアナ・ランスター ティアナ 大事な教え子で部下 エリオ・モンディアル エリオ 大事な教え子で部下 キャロ・ル・ルシエ キャロ 大事な教え子で部下 【技能・能力】 能力名 内容 魔法 自身の魔力を用いて起こす技能。特に砲撃、防御の魔法に優れる。 デバイス操作 デバイスを扱う技能。特にレイジングハート、レイジングハート・エクセリオンの扱いに優れる。 教導 他者を教え導き、能力を高める技能。特に基礎鍛錬、射撃関係の教導に優れる。 以下、リリカルなのはクロス作品ロワイアルにおけるネタバレを含む +開示する 【ロワでの面識(074 Round ZERO ~ SAWS CUNNING(後編)の時点 )】 キャラ名 呼称 関係 初遭遇 フェイト・T・ハラオウン(sts) フェイト隊長(公用)/フェイトちゃん(私用) 10年来の親友 未遭遇 八神はやて(sts) 八神部隊長(公用)/はやてちゃん(私用) 10年来の親友 未遭遇 ユーノ・スクライア ユーノ君 10年来の仲間 未遭遇 クロノ・ハラオウン クロノ提督(公用)/クロノ君(私用) 10年来の仲間、フェイトの義兄 未遭遇 シグナム シグナム副隊長(公用)/シグナムさん(私用) 10年来の仲間 未遭遇 ヴィータ ヴィータ副隊長(公用)/ヴィータちゃん(私用) 10年来の仲間 未遭遇 シャマル シャマルさん 10年来の仲間 未遭遇 ザフィーラ ザフィーラさん 10年来の仲間 未遭遇 スバル・ナカジマ スバル 大事な教え子で部下 未遭遇 ティアナ・ランスター ティアナ 大事な教え子で部下 未遭遇 エリオ・モンディアル エリオ 大事な教え子で部下 未遭遇 キャロ・ル・ルシエ キャロ 大事な教え子で部下 未遭遇 ヴィヴィオ ヴィヴィオ 保護対象 未遭遇 ギンガ・ナカジマ ギンガ 仲間 未遭遇 ルーテシア・アルピーノ ゼスト・グランガイツ クアットロ クアットロ 警戒 未遭遇 チンク ディエチ 柊かがみ ?(名前は知らない) 保護対象 026 残る命、散った命(前編) 金居 金居君 仲間(少し警戒) 026 残る命、散った命(中編) シェルビー・M・ペンウッド ペンウッドさん 仲間 026 残る命、散った命(中編) 武蔵坊弁慶 弁慶さん 仲間 060 敵か味方か? 高町なのは(A s) もう一人の自分 未遭遇 フェイト・T・ハラオウン(A s) もう一人のフェイト 未遭遇 八神はやて(A s) もう一人のはやて 未遭遇
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その日はアリサ・バニングスにとって、単なる平凡な日々の中の一瞬の過ぎないはずだった。 夕暮れ、空を夕暮れが包むあの時までは 大学の帰り、親友のすずかと別れ家路を急いでいた時だった。 突如現れた数人の男が自分を取り囲む。暴れるまもなく口と鼻に添えられるハンカチ。 漂う薬品の香り、弛緩する体 次に気が付いた時、彼女がいたのはどこかの廃ビルの中。 両手は頭の上で背中に押し付けられた鉄筋ごと縛られ、服もいつの間にか半分以上脱がされていた。 刻一刻とあらわになっていく、女神のごとき肢体。恐怖が彼女の心を壊していく。 下卑た男達の笑い声を聞きながら、アリサはどうすることも出来ない自分に悔しさを滲ませ咽び泣いた あまりにも無力、あまりにも哀れ (誰か…助けて…!) ガーゼで口をふさがれ、叫べない助けを胸の中で幾度も念じる だがここは人通りも疎らな裏通りの廃墟の中。 彼女の嘆願むなしく、ついに男は彼女がまとう最後の下着一枚に手をかけ…消えた 「え…?」 アリサを囲んでいた男達の顔から笑顔が消える。今まで目の前にいた自分達の仲間が突然消えたのだ。 『突如真上から飛んできた緑色のナニかに絡め取られ』て ドサリ 何か重いものが落下する音。 振り向けばそこには、情けなく下半身を露出した、 たった今どこかへと消えた男が意識を失い泡を吹いて倒れている。 「な、何ぎゃっ」 突如自分等を襲った怪異に唖然とする暇もなく、続けてアリサから見て右側にいた男が、 大きくしなる緑色の光に吹き飛ばされた。 斜め上に向かって飛翔し、天井のパイプをぶち抜いた後落下し同じくそのまま動かなくなる。 「な、何だよこれ…何だってんだよぉ?!」 最後に残った男一人、あまりにも自身の理解力を超えた出来事に完全に恐慌に陥る。 懐からナイフを取り出し、周囲を威嚇するように振り回すが… 「ひゅがっ?!」 暗闇から三度目の襲撃、今度はそれまでのものとは違い、 一般人のアリサにも視認できる速度でそれは現れた。 緑色に輝く光の鎖、それが男の首へと巻きついているのだ。 「あ…が、が…」 男の顔、赤から青へと変異。 ナイフを力なく落とす。と、聞こえてくる足音。鎖の延長上、暗闇の中に人間の気配。 接近、闇より影が薄っすらと浮き出、やがて一人の青年の輪郭を形成した。 「ぁ……」 アリサにはその青年に見覚えがあった。 ファンタジックな世界で戦っている友人の知り合い、奇妙な宿縁の男。名、ユーノ・スクライア 「もう大丈夫だよ、アリサ。助けに来た」 顔に浮かぶ、柔和な笑み。だが瞳に浮かぶは静かな激情。 彼女から数度、首が男へと傾くだけで表情が変わる、氷の彫刻のような冷徹で、そして美しい能面 「バニングスの令嬢目当てで彼女を狙ったのか…それとも行きずりか…まぁどっちでもいいや。 君等はさぁ」 「ぁ…がぐ…ひゅっ!」 「下衆が人間様の言葉を喋るなよ。今更謝ったって遅いだろう? 悪いことしたなら、ちゃんと罰は受けないと…ね」 くい、と指を引く。一層男の首へと食い込む緑の鎖。 瞬間男は白目を剥き、その場へと倒れこんだ。全員死んではいない。 どれだけ怒りを内包しようと、最後の一線を超えないのが彼らしいところか 縄を切り、上着をアリサへとかけ、彼女の心をやさしく包むように抱きしめる 「久しぶりにお休みもらってさ、懐かしく思ってこっちに来たんだよ。 で、偶然このビルに入ってくあいつらを見てね…嫌な予感がして…でもよかった。間に合って…」 体に染み渡るようなユーノのぬくもり、 先ほどの男達の嫌悪を感じる生暖かさと比べ、相手が違えばここまで感じ方も変わるのかと、 取りとめも無い思考のままアリサは眠りに再び落ちていった 二度目の目覚め、気が付けばビルの外、ユーノのそれよりも大きなジャンパーを自分は身に着けていた。 赤いサイレンが目にしみる スっと差し出される、湯気を立てた黒い液体に満たされたカップ。 すぐ隣には目覚める前と同じくユーノが。 受け取り、一口含む。 舌を焼く熱、それは先ほどのユーノの瞳を見たとき、全身に走った感覚に似ていた。 嬉しかった。普段穏やかな彼が、自分のためにあれほどの激情をさらけ出してくれた事が あれが自分だからなのか。 元々彼のうちに眠る性質のうちのひとつで、自分以外誰かが同じ状態に陥っても同じなのか、 それはどうでも良かった。 ただ、そんな彼から自分はもう目を離せないのだろうと、 手に入れるためならどんな労力も惜しまないであろうと。客観的にアリサは感じていた それは美しい刀に魅入られたような、熱く冷たい危険な恋 この思いがどんな決着に帰結するのかはわからない。 ただ今は、先ほどとは違う昔から知っている彼の魅力のひとつ。 この柔らかく暖かいぬくもりに包まれていようと、 あわてて向こうから走ってくるすずかや両親の姿を見ながら、そう思うアリサだった
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一方…衛星軌道上のデビルアースラもデビルアルカンシェルのエネルギーチャージが完了していた。 『これで北海道もろとも消滅してしまえ!! デビルアルカンシェル発射!!』 ついに発射されたデビルアルカンシェル。漆黒の高エネルギーが北海道の地表目掛けて 突き進んでいくが、地上のジャイアントレイジングハートのエネルギーチャージも完了していた。 「それじゃあ行くよ!」 「おう!」 「照準もバッチリだ!」 「ジャイアント!! スターライト!! ブレイカァァァァァァ!!」 オーサムを中心にした周囲に巨大な魔法陣が現れ、ジャイアントレイジングハートから 極太の魔砲が放たれた。その反動はジャイアントレイジングハートを握るオーサムの巨体さえ 地にめり込ませる程の力を持っていたが、それでもオーサムはレイジングハートの照準を 狂わせない。巨大なスターライトブレイカーは衛星軌道上のデビルアースラへ向けて 真正面に突き進み、ついにデビルアルカンシェルと衝突した。 『な!? デビルアルカンシェルが地表に着弾しないだと!? 一体何が起こったんだ!?』 空中での起こったデビルアルカンシェルとジャイアントスターライトブレイカー同士の 衝突は押しす押されつ。双方互角だった。この勝負…力を抜いた方の負けだ。 それ故に双方は己の勝利を掴まんと発射し続けていた。 「うおおおおおおお!!」 『こなくそぉぉぉぉ!!』 しかしその時、ジャイアントレイジングハートから火の手が上がった。 「大変だよクロ!! 増幅装置がエネルギーの負荷に耐えられずに燃えはじめちゃったよ!!」 「オーサムの関節からも煙が上がってるぅ!」 「まだだぁ! 気合でもたせろぉ!!」 「気合って…。」 最後の最後に精神論を持って来るクロになのはとユーノは思わず呆れそうになったが、 もう他にやるべき事は全てやってしまった以上、精神論以外に残された物は無いのだろう。 しかし、必死なのはデビルアースラの方も一緒だ。既にデビルアースラの動力炉も 火の手が上がり始めている。 『くぬぬぬぬぬ!! 負けるものかぁぁぁぁ!!』 と、その時だった。デビルアースラの側面部に何かが着弾した。 『ん!?』 デビルアースラが側面を見ると、そこには何とフェイトの姿があったのである。 フェイトは自身の周囲に結界を張る事によって宇宙空間での活動を可能にしていた。 「プラズマランサー!!」 フェイトの発射した魔砲が連続でデビルアースラに着弾する。 『こ! この! 邪魔するなぁ!』 これがいけなかった。デビルアースラが一瞬フェイトに気を取られたが故に デビルアルカンシェルに使用する力が若干抜けてしまい、 ついにジャイアントスターライトブレイカーに押しのけられてしまった。 『何!? う…うおわぁぁぁぁぁぁ!!』 デビルアースラは完全にジャイアントスターライトブレイカーに飲み込まれていた。 『くそ! まだまだだ~!』 ギリギリの所でデビルアースラから脱出していたデビルは再帰の為に 新たな乗り移る体を探そうとしていたが、そこで突然何かに吸い込まれてしまう。 『う! うわ! 何だ!? うわぁぁぁぁ!!』 デビルが吸い込まれた先にはデビルが封印されていた小瓶を持ったはやての姿があった。 「あ…はやて…いたの?」 「あ~あ~、私の出番これだけやなんて…。この話書いた奴はクズやな…。」 おまけにはやてがいた場所がフェイトの背後だったりした為、フェイトも少し呆れていた。 デビルが再封印された後、やっと駆け付けて来た他の局員が次々 粗大ゴミ投棄場に降り立って事後処理に駆け回っており、 また先の戦いによって大破したアースラの回収作業等も行われていたが なのは達は何故かミーくんの作った鍋を突付いていたりする。 「まったく…だからあの時言ったんだ。あの小瓶のフタを開けるなよって。」 「ごめんね…まあこちらもこちらで色々あったのよ…。」 「でも猫に説教されるなんてプライド傷付くな~。」 「何だと!? 今度こそ本当にイタチ鍋にするぞ!?」 「イタチ鍋食べた~い!!」 「イタチ鍋!! イタチ鍋!! イタチ鍋!!」 「ひぃぃぃぃ!! やめてぇぇぇぇ!!」 クロ・ミーくん・剛の三人は忽ちイタチ鍋コールを始めてしまい、ユーノも嘆いていた。 しかし…それだけじゃなかった。 「ねぇ…なのはを撃ち殺そうとしてたんだって?」 「あ…。」 ユーノの背後には憎悪の炎を燃やすフェイトの姿があった。 「貴方…なのはと心中しようとしたんだって…?」 「いや…あれは非常事態だったワケだし…ご…ごめんなさい…。」 「少し頭冷やそうか…?」 「ヒィィィィ!! ごめんなさぁぁい!!」 ユーノはフェイトに服の襟を掴まれ、そのまま何処ぞへ連行されてしまったが その後で剛とミーくんは回収されていくボロボロのアースラを見ていた。 「あ~…君達の船…派手に壊しちゃったね…。」 「別に良いよ。人の命は一度失われたらもう二度と取り戻せないけど…機械は何度でも修理出来るから。 貴方達があのスクラップから巨大なレイジングハートを作った様に…。でもまあ…いくら管理局でも 流石に貴方達みたいに直ぐに新しい物をホイホイ作ったりは出来ないけど…。」 先の戦いでミーくんが悪魔のチップでスクラップを材料に組み上げたジャイアントレイジングハートは デビルアースラを吹き飛ばした後、限界に達して自壊してしまい、また元のスクラップに戻ってしまったが、 ただのスクラップからこれだけの物を作れるミーくんと、そのミーくんを作った剛の 技術にはメカの知識も無いなのはも少々敬服していた。 「にしても時空なんとかだっけ? 以前オイラ達も砂漠の異世界に飛ばされてしまった事が あったが…異世界なんて物は沢山あるんだな~。」 そうして鍋を食べ終わった頃には作業も終了し、ついにお別れの時が来た。 「それじゃあ猫さん達…またね?」 「おう! またデビルの封印を解いて体乗っ取られるんじゃねーぞ!」 「あ~…頑張ってみる…。」 別れの挨拶の後、なのは達を乗せた次元航行艦はミッドチルダへ帰って行った。 「行っちまったな…。」 「ああ…。」 「イタチ鍋…食べたかったな~…。」 その頃…ユーノはと言うと、フェイトからキツイお仕置きを受けさせられていたと言う。 「なのはを殺して自分も死のうとしたんだって…? なのはの顔に何発も平手打ちしたんだって?」 「だからそれは非常事態だったんだって! って言うか僕がオチなの!? そんなの酷いよ!」 「お痛はあかんよ~。」 何故かドサクサに紛れてはやてまで制裁に加わっているのだからますます性質が悪かった。 まあ…頑張れ…ユーノ君! おわり 前へ 目次へ
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Reconquista(後編) ◆HlLdWe.oBM 明日香にとって先程の光景は理解しがたいものばかりだった。 突然光と突風と共に瓦礫が飛んで来て死ぬかと思ったら、フェレットのユーノが人間に変身した。 そしてユーノが目の前に緑の盾を出して、それを何とか凌ぎきった。 ここまではまだ一応明日香にも何とか理解できる範疇だった。 フェレットのユーノが人間に変身して魔法の盾で自分達を守ってくれたのだろうと思っていた。 だが次に起こった事は明日香にとって最も衝撃な事だった。 ルーテシアがユーノを刺したのだ。 「なによ、いったい!?」 明日香は必死に走りながら誰もいない森の中に疑問を投げかけていた。 ルーテシアが持っていたウィルナイフは明日香が身に付けているガオーブレスに内蔵されていたものだ。 先程の騒動の隙に引き抜かれていたのだろうが、そんな事はもうどうでも良かった。 何より明日香には分からない事があった。 それはルーテシアがユーノを刺した動機だ。 病院への道中で何とか聞き出した内容によればユーノとルーテシアは自分達に会うまでずっと二人きりで、その間は特に言うべき事はなかったらしい。 実際明日香達と出会った時のルーテシアとユーノは一緒で、それは先程までも変わらない事だった。 しかも直前にユーノは自分達の命を救ってくれたばかりだ。 そんなルーテシアにとって同行者であり恩人であるユーノを刺す理由が全く明日香には理解できなかった。 もしかしてユーノが人間になれる事を隠していたからかとも一瞬思ったが、その程度では大した理由ではないとすぐに否定した。 結局はルーテシアが答えてくれない事には何も分からないが、ルーテシアが返してきた答えは単純だった。 ――願いを叶えるためにこの地にいる全員を皆殺しにするからだ、と。 それで明日香にもルーテシアの行動の意味は一応理解できた。 最後まで生き残れば願いを叶えるとプレシアは先程の放送で宣言した。 だから魔が差してルーテシアがあんな行動を取る可能性は十分にある。 だがそれでも明日香には未だに分からない事があった。 それはルーテシアの眼だ。 (なんで、なんであんな事をしておいて、そんな目をしていられるのよ!) ルーテシアの眼はユーノを刺したにもかかわらず大して変化がなかった。 寧ろ眼というよりは表情といった方が適切かもしれない。 人を殺すと決めた顔にしては今まで明日香が見てきた顔とどこも違わない。 それが逆に恐れを生んでいた。 ルーテシアが感情を露わにして殺そうとすれば、それはどこにでもいる殺人者の姿だ。 だが無表情で何の感傷も抱いていないように淡々と行動するルーテシアは普通とは違う恐怖があった。 いつのまにか頭の中で腹を刺されたユーノが。 首を吹き飛ばされたアリサが。 天上院明日香の姿と重なっていた。 (殺される! 私も、ユーノみたいに――殺される!?) ルーテシアの凶行を見せつけられて明日香は徐々に冷静さを失っていた。 かつてエグリゴリのエージェントに対して某赤帽子の傭兵は人間の心理について次のように述べた。 『人間の冷静な判断力を失わせるには、恐怖と怒り……たった二つの感情を操作してやればいいのだよ!』 元グリーンベレーで都市における心理戦の専門家でもある彼の言う事はもっともだ。 人間とは許容範囲を超えた感情をコントロールする事を不得手とする傾向がある。 もちろん平時ではそのような事態に陥る事はほとんどないだろうが、ここでは違う。 通常なら殺し合いという異常事態の中で特別な経験を積んでいない者は混乱して当たり前だ。 平時と同様の精神でいる事など土台無理なのだ。 天上院明日香は普通の一般人とは違ってデュエリストとして死闘を潜り抜けてきた経験はある。 だがそんな経験はこの状況下では脆かった。 しかも明日香は直前まで殺し合いの場にも関わらず、そのような危険な目には一切遭わずにここまで来た。 それはつまり殺し合いという場において殺し合いとは無関係な安全な場所にいたという事だ。 それがいきなりこのような急転直下の事態に陥れば冷静な判断などできるはずなかった。 だからあの場から逃げた。 それは人間の本能に従った結果だった。 そこに冷静な判断も一人だけ逃げるという罪悪感もない。 明日香の中にあったのはルーテシアという恐怖から一刻も早く逃れたいという欲求だけだった。 それはまるで恐怖という化け物に矜持を奪われたかのようだった。 どれくらい逃げただろうか。 瓦礫が散らばる市街地を抜け、土埃が舞う平野を抜け、閑散とした林を抜け、鬱蒼と茂る森を抜け―― I-7の南端からA-7の北端にループした事にも気づかぬまま走り続けて―― 「はぁ……あぁ……はぁ……ぅ……うぁ……」 ――ようやく明日香の足が止まった。 どれくらい走り続けたのか分からなかった。 辛うじて分かった事は近くにルーテシアはいないという事だけだ。 前方に湯気が立ち上る建物が見えるが、今はどうでも良かった。 同時に今まで張り詰めていた緊張が解けて身体の力が一気に抜けた。 その影響で手からデイパックを取り落として、ようやくデイパックが3つある事に気付いた。 手数が増えればそれだけ取れる選択肢は多くなり有利になるというデュエルで言う手札的感覚で取って来たのだ。 それは無意識の内に働いた思考の結果だった。 「ん、これって……」 ふと落ちたデイパックに目を遣ると中から青い宝石が零れている事に気付いた。 明日香はそれが何なのか知っていた。 それは放送の前に皆の支給品を確認し合っていた時にユーノが説明してくれたものだった。 「ジュエルシード、でもこれを使えば……」 ロストロギア指定を受けた次元干渉型エネルギー結晶体であるジュエルシード。 持ち主の願いを叶えるが危険な代物で間違っても使ってはいけないらしい。 明日香はそれを拾い、次いでデイパックの中から取り出した夜天の書と交互に眺め始めた。 その眼には暗い影が宿っていた。 夜天の書もジュエルシードと共にユーノから説明を受けた代物であった。 「このジュエルシードの力で夜天の書を使えば、私もなのはさん達みたいに魔法を使う事が……」 明日香はふとなのは達が魔法を使っている様子を思い出していた。 あの力が自分にもあれば皆を助けられる、ルーテシアのような危険な人物にも正面から立ち向かえる。 今のままの何の力もない状態ではそのうち仲間諸共殺されるしか想像できなかった。 だから、明日香はジュエルシードを―― 【1日目 朝】 【現在地 B-7 温泉付近】 【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康、疲労(大)、チンクへの疑念、ルーテシアへの恐怖心 【装備】ガオーブレス(ウィルナイフ無し)@フェレットゾンダー出現! 【道具】支給品一式×3、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、トバルカインのトランプ@NANOSING、ゾナハカプセル@なのは×錬金 【思考】 基本:殺し合いには乗らない。仲間達と合流してプレシアを打倒する。 1.ジュエルシードを―― 2.ルーテシアから離れる。 3.ゾナハ……って何? 【備考】 ※転移魔法が制限されている可能性に気付きました。 ※万丈目にバクラが取り憑いている事を知りません。 ※チンクの「万丈目に襲われた」という情報は、嘘か誤りだと思っています。 ※トバルカインのトランプが武器として使える事に気付いていません。 ※ユーノの本当の姿はフェレットであり、ルーテシアに殺されたと思っています。 ※I-7からA-7にループした事に気付いていません。 ※明日香がジュエルシードをどうするかは後続の書き手にお任せします。 ▼ ▼ ▼ 人を癒すはずの病院の姿は既にそこにはなかった。 二度のエンジェル・アームの発動によって完膚なきまでに崩壊したそこにあるのは、少し前までは病院だった瓦礫の山だ。 既に病院を崩壊させた張本人であるヴァッシュは絶望の中で幽鬼のように当てもなく去って行った。 だからここにはもう生きている者など一人もいないはずだ。 しかし、そんな瓦礫の山が突如として蠢き始めた。 瓦礫の山の麓に散乱する大小様々な形の瓦礫で出来た小さな山々。 そのうちの一つが鳴動している。 微かだった振動は徐々に大きくなっていき、やがてその瓦礫の小山は崩れ去った。 その中から出てきたのは灰色のコートに身を包み右目に眼帯を付けた銀髪の少女チンクだった。 「く、は! 危ない所だった、ハードシェルが間に合って助かった」 あの時、間一髪で身に迫る危険を察知して病院の窓から飛び出した時、エンジェル・アームは放たれた。 運が良かった事にチンクが飛び出した窓は南側でエンジェル・アームが放たれた北西とは逆に位置する場所だった。 そのために直接エンジェル・アームの光に巻き込まれずに済んだ。 だが被害を回避するためにランブルデトネイターでラオウの兜と残っていた工具全てを消費してしまった。 最初に兜の大爆発で距離を作り、続けて工具の小爆発で瓦礫を破砕して、あとはシェルコートを使用してのハードシェルで耐えきった。 もともと施設の大爆発にも耐える程の高硬度を誇るものだが、ここでは制限のために耐えきる自信はなかった。 だが現実にチンクは耐えきり、こうして再び地面の上に立つ事ができる。 「これは、なんという有様だ」 病院があった場所には成れの果てである瓦礫の山ができていた。 もちろん病院内にあった死体はどれも無事な状態で残っているとは思えない。 ディエチも例外ではなく、それらの死体はもう弔う事は永久に出来ない状態になってしまった。 「……ディエチ」 チンクは在りし日のディエチの姿を思い返していた。 だが思い返せば思い返す程に懐旧の想いは募るばかりであった。 そして同時に自分の不甲斐なさも痛感するのだった。 自分がガジェットを使って不用心にあのようなメッセージを出したせいでディエチは死んでしまったと悔恨の念が絶えない。 出来る事ならプレシアが放送で言っていた褒美でディエチを生き返らせて、もう一度会いたいと思う。 クアットロやルーテシアが死んでも生き返らせればいいとさえ思える。 だが、それが正しいのかチンクには判断が付かなかった。 「なぜだろうな、ディエチ。姉は、お前がそんな事を望まないような気がしてならない」 なぜそう思うのかチンク自身にも分からない。 ただあの死に顔を見ているとなんとなくディエチは満足して死んでいったような気がしてくるのだ。 だからあのまま静かに眠らせてやった方がディエチのためにもいいのではと思える。 「姉はどうすればいいんだろうな」 そんな答えが返ってくるはずもない問い掛けを風の中にする。 幼い身体に比べて長めの銀髪を風の流れるままに任せながらチンクは静かに考えに耽っていた。 あの病院が目の前にある瓦礫の山に化したのかと感慨深げに眺めていると、瓦礫の中に何か埋もれているのを見つけた。 興味を抱いて近づいて見ると、それはボロボロになって所々罅が入った紫と黒を基調とした大剣・大百足だった。 そして近くにはその持ち主だと思われる人物、正確にはその人物の首があった。 金髪の髪の下にある顔はチンクにとって見覚えのある顔だった。 「……フェイト・T・ハラオウン。貴様も死んだのか」 これで見知った死体を見るのは三度目という事もあってか、もう特に思う事はない。 そしてしばらくしてチンクは何を思ったのか大百足を拾い上げると、その場に刺した。 まるでフェイトの墓標のように見えるが、チンクはそんなつもりで刺したのではなかった。 チンクは刺した大百足に背を向けると、ゆっくりと歩き出した。 一歩、一歩、一歩、一歩、少しずつ大百足との距離は広がっていった。 そして一度立ち止まって振り返ると、その場で回れ右の要領で大百足の方に顔を向けた。 「距離はギリギリだな」 チンクはデイパックからナイフを一つ取り出すと、いつものように構えた。 新品同様のナイフとは対照的に大百足は少しの衝撃で壊れそうな程にボロボロだった。 「もしナイフを投げて剣が壊れれば殺し合いに乗ろう。壊れなければ殺し合いには乗らない。ディエチ、お前が選べ」 チンクはそのナイフに、亡きディエチに、己の道筋を決めさせるつもりだった。 剣が壊れるか否かは……ディエチに決めてもらいたかった。 そんな事は非科学的だと分かっていてもこうするのが一番気持ちの面ですっきりすると思ったのだ。 「では、いくぞ!」 裂帛の気合と共にナイフはチンクの手を離れて大百足へと吸い寄せられるように飛んでいった。 そして勢いを落とさぬままナイフは―― 【1日目 朝】 【現在地 H-6 病院跡地】 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、疲労(中)、ディエチの死に対する悔恨 【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖-、シェルコート@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、料理セット@オリジナル、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA s、被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:姉妹と一緒に元の世界に帰る。 1.剣が壊れたら殺し合いになる、壊れなければ殺し合いに乗らない。 2.姉妹と合流した後に、レリックを持っている人間を追う。 3.姉妹に危険が及ぶ存在の排除、及び聖王の器と“聖王のゆりかご”の確保。 4.クアットロと合流し、制限の確認、出来れば首輪の解除。 5.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲。 6.天上院を手駒とする。 【備考】 ※制限に気付きました。 ※高町なのは(A’s)がクローンであり、この会場にフェイトと八神はやてのクローンがいると認識しました。 ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました。 ※大剣・大百足は後一撃加われば壊れるかギリギリの状態です。 ▼ ▼ ▼ ルーテシアが今まで無関心だったデスゲームに乗るきっかけとなったのは明日香の話だった。 病院へ向かう途中で明日香はこちらの関心を引こうと今までどこにいたかを話していた。 その中にスカリエッティのアジトが出てきたので、一つ質問をしてみた。 ――生体ポッドの中に何かあったか、と。 明日香はその質問に「何もなかった」という答えを返してきた。 その瞬間、ルーテシアの気持ちは決まった。 最初ルーテシアはアジトが自分の知っているアジトだと思っていた。 だが明日香の話に出てきたアジトにはあるはずのものがなかった。 生体ポッドの中で眠っているはずのメガーヌ・アルピーノ、ルーテシアの母親だ。 それがいないという事はつまり―― (――プレシアの言っている事は正しかった?) ルーテシアはここへ転送される前の事を思い出していた。 皆が転送された部屋に何故か一人取り残された自分。 壇上から降りて来て自分に近づいてくるプレシア。 普通に話せる所まで近づいてきたプレシアはある事実を話し始めた。 曰く、ここへ集められた人々や建物はそれぞれ別々の世界から集めたので本物はルーテシアのいた世界で元気でいると。 それからプレシアは殺し合いを円滑に進めるために皆を殺して回ってほしいと言ってきた。 ここにいるのは全て別の世界の人なので殺しても元の世界に戻れば問題ないとも付け加えていた。 それを聞いても別に何も思わなかった。 たぶん急な展開に頭が追い付いていなかったのだろう。 そのうち反応が乏しい事に気付いたプレシアが唐突に不思議な事を言った。 ――私は死んだ人でも生き返らせる事が出来るのよ、と。 そしてこちらの首にある首輪を指差すと、なぜか首輪が甲高い電子音を鳴らし始めた。 その音が耳障りになって鬱陶しいと思っていると、 ――ボン 首輪が爆発した。 自分の首が宙を舞って視界が回る様子はなぜか鮮明に映った。 そしてルーテシア・アルピーノは死んだ。 だがすぐにルーテシア・アルピーノは生き返った。 それは目の前にいたプレシアの力のおかげだと当の本人は言っていた。 そしてプレシアが続けて言った言葉は強く心に深く刻まれた。 ――最後の一人になれば母親を復活させてあげる、と。 それは青天の霹靂のような言葉だった。 思わず理由を、なぜ自分にそんな事を言うのか尋ねてみた。 プレシアは少し悲しそうな表情を顔に浮かべて呟いた。 ――似ているのよ。母親を失ったルーテシアが自分と似ている、と。 そして、その言葉を最後に私はついに会場へと転送された。 「プレシアの言っていた事は本当だった、だからあの言葉も正しい」 先程出会ったキース・レッドという男はなぜか自分を知っていた。 おそらくプレシアが言っていた別世界の自分と知り合いなのだろう。 ルーテシアはそう判断した。 あの時は無闇に相手を刺激しないように最低限の受け答えのみだったから確信はないが、あの話振りだとそうとしか考えられない。 それなら名簿に名前が二つ載っている機動六課の3人にも説明がつく。 つまり別々の世界から連れて来られているのだ。 だからゼストやナンバーズも自分の知る彼らとは違う事になる。 「だから、大丈夫」 皆殺しを目指す事にしたが、今の状態でキース・レッドに敵うと思えず、あの場は手を出さずに状況を静観する事にした。 そして状況は思わぬ方向に転がったが、それはルーテシアにとって悪くないものだった。 だから別れる時にキース・レッドとブレンヒルトに自分が転送される直前の出来事を教えておいた。 いろいろ上手い具合に生かして支給品を貰ったのでそのお返しのつもりだった。 それを聞いた二人はひどく驚いていた。 特にキース・レッドは何やら深刻そうな表情を浮かべたが、すぐに不敵な笑みを浮かべていた。 最初はプレシアの言う事が半信半疑だったのでレリックを手に入れようとしたが、もうそれに拘る事はない。 自分だけでできそうなら迷わず殺しに行くが、自分の力で敵わない相手に向かって行こうとは思わない。 自分では敵わない相手は他の人に任せればいい。 そうやってここにいる全員を殺して本当の皆のいる世界へ帰る。 それがルーテシアの新しい目的になった。 もちろんプレシアが約束を守るなら最後の一人になって母の目を覚ます事ができる。 そうすれば自分にも「心」が生まれる。 「待っていてね、母さん」 母への誓いを胸にルーテシアは先の取り決め通り北へ向かって行った。 元々スカリエッティのアジトを目指していた事もあり、一度自分の目で確かめたいと思った事が理由だった。 キース・レッドから渡された物はイフリートというモンスターの召喚マテリアだった。 元々は既に死んだ高町なのはに支給されたものだったが、もちろんキース・レッドもルーテシアもそんな事は知らない。 この道具は召喚士である自分に適しているように思われる。 差し当たっての問題は上手く扱えるかどうかだが、それはこれから考えたらいい。 一応ナイフと銃も持っているので心配はそれほどない。 「……それとキャロ・ル・ルシエ」 キャロ・ル・ルシエとエリオ・モンディアル。 自分と同じ召喚士とそのパートナー。 この二人はルーテシアの中ではある意味特別な存在になっている。 自分と同じ召喚士でありながら仲間や家族に恵まれているキャロと、その隣にいるエリオ。 (負けない、ガリューや白天王がいなくても負けない!) それは幼い時には誰もが持つ対抗心と言われるものだが、ルーテシアにはそこまで理解できていない。 だからその対抗心が某戦闘機人のせいで暗い嫉妬に変貌しつつある事にも気づいていない。 エリオ亡き今その負の感情はキャロに向いていた。 【1日目 朝】 【現在地 G-7】 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、疲労(小)、キャロへの嫉妬 【装備】マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ウィルナイフ@フェレットゾンダー出現! 【道具】支給品一式、召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、エボニー(10/10)@Devil never strikers、エボニー&アイズリー用の予備マガジン 【思考】 基本:最後の一人になって元の世界へ帰る(プレシアに母を復活させてもらう)。 1.どんな手を使っても最後の一人になる(自分では殺せない相手なら手は出さずに他の人に任せる)。 2.北へ向かい、スカリエッティのアジトへ一度行って生体ポッドの様子を確かめる。 3.一応キース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探してみる(半分どうでもいい)。 4.一応18時に地上本部へ行ってみる? 5.もしもレリック(刻印ナンバーⅪ)を見つけたら確保する。 【備考】 ※ここにいる参加者は全員自分とは違う世界から来ていると思っています。 ※プレシアの死者蘇生の力は本物だと確信しています。 ※ユーノが人間であると知りました。 ▼ ▼ ▼ 「ふふふ、なかなか便利だな。だが、使用は控えておくか」 キース・レッドはサンライトハート改の推力で山吹色のアーチを宙に描きながら川を越える事に成功していた。 最初は役に立たないと思っていた金属板は意外にも攻撃・防御・移動・回復と便利な物である事を改めて感じていた。 だが過度の使用は禁物だ。 ARMSのように何か制限が掛かっているかもしれない。 それにあまり使い過ぎるとそれだけ誰かに目撃される可能性が出てくるので、そうなれば肝心な時に対処される可能性がある。 しかも本来はキース・レッドのものではないので、本来の持ち主と出会えば最悪返り討ちになる事もある。 そのような事態を避けるためにもサンライトハート改を使うのは控えたほうが賢明だ。 普段は待機状態で回復の促進に回して、ここぞという時つまり戦況を変える時にこそ使うべきだろう。 キース・レッドは待機状態に戻した核鉄を眺めながらそんな事を考えていた。 「気掛かりはルーテシアが言っていたプレシアとの会話だ。ここにいるシルバーが私の知っているシルバーではない、か」 もしそれが本当ならここにいる必要はない。 今すぐにでも参加者を皆殺しにしてプレシアの力で元の世界へ返してもらえばいい。 もしそれが嘘なら今のまま行動しておけばいい。 先の取り決め通り中央付近でキース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探しながら18時に地上本部へ行けばいい。 つまりはどちらにせよ、これからの行動に然して変更はない。 敢えて言うならこれから新しく出会う参加者への対応だ。 開口一番にキース・シルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』について知っている事を聞き出すとして、その後どうするのか。 殺すか、捜索者にするか。 役に立つなら捜索者に仕立て上げ、役に立たないなら殺す。 キース・レッドはこれを基本にしようと考えていた。 もちろんその場で臨機応変に対応した結果、最も良さそうな手を講じるが。 「シルバーよ、今度こそ貴様の身に刻んでやる。我が最強のARMS、グリフォンをな」 【1日目 朝】 【現在地 H-6 川の畔(北側)】 【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】 【状態】健康 【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(3/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金 【道具】支給品一式×5、ジャッカルの予備弾(18発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(神崎優衣、高町なのは(A’s))、ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA s、S2U@リリカルTRIGUNA s、ランダム支給品0~2(元カレン、『ベガルタ』『ガ・ボウ』ではない) 【思考】 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。 1.中央に向かいシルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。 2-1.出会った者にシルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』について知っている事を聞き出す。 2-2.聞き出した後、役に立ちそうならシルバーと『ベガルタ』『ガ・ボウ』を探すようにさせ、役に立たないなら殺す。 3.1及び2を邪魔するものは容赦なく殲滅する。 4.できるだけ早く首輪を外したい。 【備考】 ※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。 ※自身に掛けられた制限について把握しました。 ※白刃の主をヴァッシュだと思っています。 ※サンライトハート改は余程の事がない限り使う気はありません。 ※ルーテシアの話の真偽についてはどうでもいいみたいです。 ▼ ▼ ▼ 市街地から少し離れた林の中に作られた畑。 今は一面雑草だらけの場所は本来なら季節によってさまざまな食物を提供してくれる場所だ。 そんな畑の隅に寂しく建っている小屋の中に魔女と魔導師がいた。 1st-Gの魔女ブレンヒルト・シルトとミッドチルダの魔導師ユーノ・スクライアだ。 だが、どうやら現在進行形で風向きが怪しい様子だ。 「やっぱりここへ向かう途中から意識があったのね。で、気絶した振りをして年頃の女性に背負われた気分はどうなの? ふふふ、さぞかしいい気分だったでしょう……いい度胸ね」 「あ、その事に関しては、その、ごめん。だから、笑顔で拳を振り上げるのは如何なものかと」 「……怪我していなかったら腹に一発ストレート入れていたところなのよ、あの娘に感謝するのね」 「今のって笑うところなのかな」 先の取り決めでルーテシアは北へ、キース・レッドは中央へ、ブレンヒルトは南へつまりこの付近で捜索をする事になった。 あの場を凌ぐための苦肉の策だったが、余計なタイムリミットが課せられたのは失敗だった。 本来ならその場だけの嘘方便で後は適当にやり過ごすつもりだったが、これでそうもいかなくなった。 それでもユーノを連れる事は出来たので一段落付いたとブレンヒルトは自分を納得させていた。 「それより傷の具合はどうなの。見たところ、すぐに動けそうにないみたいだったけど」 「うん、今はヒーリングを掛けているから刺された直後よりはマシだよ。でも、やっぱり動くにはもう少し時間が……」 「別に良いわ。その間に聞きたい事もあるから。あなたのいた世界や魔法の事、このデスゲームの事。分からない事が多すぎるのよ。」 「それは、僕に分かる範囲なら……」 「それでいいわ。よろしくね、スクライア」 「こちらこそ、よろしく、ブレンヒルト」 ブレンヒルト・シルトとユーノ・スクライア。 この二人の邂逅は果たしてデスゲームにどのような影響を及ぼすのだろうか。 今はまだ誰にも分からない。 「そうだ、しばらくフェレットの姿になるね」 「ん、フェレットが本当の姿なの?」 「いや断じて違うから! 人間の姿が本当の僕だから! フェレットの姿の方が怪我の治りが早いんだ」 「ふーん、そうなの」 「うん、じゃあ――」 「へぇ、凄いものね。あっという間にフェレットの姿に、あ、落ち――ッ!?」 「――ッイタ!! ベ、ベッドの位置を考えていなかったなあ。ブレンヒルト、悪いけど僕をベッドの上まで上げて……あ」 今の状態を説明するとこうなる。 板張りの床にはフェレット状態のユーノが落ちていて、そこからベッドに戻してくれと上を見ながらブレンヒルトに頼んでいる。 一方のブレンヒルトは賢石の消費を抑えるためにバリアジャケットを解いて、今は制服姿でベッドの近くに立っていた。 幸か不幸か視線を上げたユーノの目に飛び込んできたのは―― 「ええ、いいわよ。 今度は落ちないようにしっかり私が持つから安心して大丈夫よ……もしかしたら力加減を間違えちゃうかもしれないけど! 下着を見られた怒りでどうにかなるとかないと思うから安心して!!」 「え、ちょ、ま、傷、傷が、あ、あ、あ、アッー!!!!!」 【1日目 朝】 【現在地 H-8 畑の隅にある小屋】 【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ】 【状態】健康、ユーノへのお仕置き中 【装備】1st-Gの賢石@なのは×終わクロ、バルディッシュ・アサルト(カートリッジ4/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、首輪(矢車)、ランダム支給品0〜1 【思考】 基本:ここからの脱出。 1.スクライア、乙女の恐ろしさを知りなさい! 2.スクライアが動けるようになるのを待ちながら今後について話し合う。 3.残り15人になったら車庫の中身を確認してみる(信用できる人以外に話す気はない)。 4.キース・レッドとの約束は一応守るつもり。 5.戦闘には極力関わらない。 6.フェイトの生い立ちに若干の興味。 【備考】 ※自分とバルディッシュに共通する知人に矛盾がある事を知りました(とりあえず保留、別世界の可能性を考慮)。 ※キャロ、金髪の青年(ナイブズ、危険人物と認識)、銀髪の青年(殺生丸)の姿を遠くから確認しました。 ※車庫を無理に開けようとすれば首輪が爆発すると思っています。中身は単体で状況を変え得る強力な兵器だと思っています。 ※ルーテシアの話の真偽は保留。 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】魔力消費大、腹に刺し傷(ヒーリング中)、ブレンヒルトによるお仕置きタイム、フェレットに変身中 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本:なのはの支えになる。ジュエルシードを回収する。 1. アッー!!!!! 2.怪我の治療をしながらブレンヒルトと今後について話し合う。 3.なんでルーテシアは僕を刺したんだろう。 4.Lや仲間との合流。 5.首輪の解除。 【備考】 ※JS事件に関連した事は何も知りません。 ※プレシアの存在に少し疑問を持っています。 ※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています。 ※ルーテシアに刺されてから小屋に着く途中まで気絶していたのでルーテシアや明日香がどうなったのか知りません。 ▼ ▼ ▼ 「ようやく動き出したのね」 薄暗い部屋の中で一人プレシアは呟いた。 空間モニターが発する仄かな光に照らされた顔には微かに笑みが浮かんでいた。 そこにはプレシアとの一件を話すルーテシアの姿が映っていた。 あの時プレシアがルーテシアに言った事は嘘ではない。 ルーテシアの母を復活させるためにレリックを捜す様子が在りし日の自分と重なったのは事実だ。 だが、そんな事はほんの些細な事でしかない。 プレシアがルーテシアを一度殺した真の理由――それはルーテシアが使役している召喚虫に他ならなかった。 ルーテシアを殺す事で一度それらの召喚虫との繋がりを断ち切って、使役主をプレシアにする事が本来の目的だ。 もしも万が一首輪と制限が解除された時のための保険、不測の事態の際の戦力にするつもりだ。 他の召喚士にキャロという少女もいたが、ルーテシアの方が持ち数の面で勝っていた。 それが決め手となった。 「さて、これからどうなるのかしらね」 プレシアは嬉しそうに画面の向こうで繰り広げられるデスゲームを観察するのだった。 その手にはルーテシアを生き返らせた道具である時間を巻き戻すカード――『タイムベント』のカードが握られていた。 ▼ ▼ ▼ 全てを失った場所でもう一度掴むものは唯一つ。 守りたかったものはもう二度と離さない。 見失わずに、振り返らずに、必ず取り戻すから。 【全体備考】 ※駅の付近(線路の先)に中身不明の車庫があります。『残り15人になるまでこの扉は決して開かない。もし無理に開けようとすればそれ相応の罰を与えようではないか』という注意書きを書いた立札が入口前に立っている。 ※H-6病院から離れた場所に壊れたガジェットドローンⅠ型が転がっています。 ※工具セットとラオウの兜はランブルデトネイターで消費されました。 【召喚マテリア(イフリート)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 炎の魔人であるイフリートという召喚獣を召喚する事が出来るマテリア。 敵全体に炎でダメージを与える「地獄の火炎」という技を使う。 片翼の天使本編では同じく召喚獣のタイタンとバハムートと三匹掛かりでセフィロスに襲いかかり、秒殺された。 詳しい制限は後続の書き手にお任せします。 Back Reconquista(中編) 時系列順で読む Next せめて哀しみとともに 投下順で読む Next 渇いた叫び(前編) ブレンヒルト・シルト Next 明日に架ける橋 ユーノ・スクライア Next 明日に架ける橋 ルーテシア・アルピーノ Next Burning Dark(前編) チンク Next せめて哀しみとともに 天上院明日香 Next 湯けむり旅情!夜天の書 キース・レッド Next 誇りの系譜(前編)
https://w.atwiki.jp/togazakura/pages/320.html
ここでは第1期及びA’sにおいてのなのはについて 年齢 高町家の次女で私立聖祥大附属小学校3年生(9歳) 役職 自称「平凡な小学3年生」。 魔法使いスキル 『A’s』時にはAAAクラスの魔導師。 仕事内容 ロストロギア(古代遺産)「ジュエルシード」探索。 ホジション 「単独でも戦闘が行える砲撃魔導師」としての戦闘スタイル。 性格 優しく面倒見のいい性格 戦いへの心構え 導師として「天才」と呼べる素質があり、ユーノを師として実践を繰り返す中で急速に才能を開花させてゆく。 魔力の放出・集束と制御を得意とし、圧縮・縮小は苦手。正式な訓練を受けないまま、 実戦の中で「単身でも戦闘を行える砲撃魔導師」としてのスタイルを確立させる。 ユーノとともにやってきたおかげで、魔力は伸びたが、A’S終了時(11歳)の時に 大怪我を負う事になる (これが、きかっけで、スターズ時に、ティアナの暴走を抑えるため叩きのめした。) 人気 特に無いと思われる 武器 『A s』におけるヴィータとの戦闘で大破したレイジングハートを修理し、 更にレイジングハートの希望でベルカ式カートリッジシステム『CVK792-A』を搭載して完成したなのはの新デバイス。 高町なのはについてへ戻る